さくらんぼ(桜桃)
山形県村山市・後藤農園の佐藤錦
甘味と酸味のバランスが絶妙
梅雨の晴れ間のような気分が味わえます。
ちょっと鬱陶しい梅雨の時期も、おいしい果物がやってくると思えば、気が晴れるというもの。その代表格が、山形のサクランボ・佐藤錦でしょう。
サクランボは「桜桃」(おうとう)とも言うくらいで、サクラの実です。ソメイヨシノやオオシマザクラなど、お馴染みのサクラは、こんな大きな実をつけません。サクランボを実らせるのは、同じバラ科サクラ属ですが、西洋から明治時代に日本にやってきた種の末裔なのです。
イラン北部からヨーロッパ西部にかけて野生していたセイヨウミザクラ(甘果桜桃)と、トルコ近辺を原産地とするスミノミザクラ(酸果桜桃)が、その原種。この2品種はヨーロッパで人気となり、16世紀頃から本格的に栽培されたそうです。
これらを日本に持ち込んでくれたのは、ドイツ人のガルトネル。明治初期に北海道に植えられました。それが東北にもひろまり、品種改良が続けられて、現在に至っています。
なかでも日本人好みにしあがった品種が、佐藤錦です。山形県東根市の佐藤栄助が、ナポレオンと黄玉を交配して作出したもので、酸味と甘味のバランスが絶妙。初めて実を結んだのは大正11年(1922年)のことでした。
新品種が世に出るためには、もうひとつ壁を突破しなくてはなりません。新品種を多数育種して、苗木にして広めなくてはならないのです。これに成功したのが岡田東作で、岡田は佐藤錦の名付け親でもあります。佐藤が「出羽錦」と名付けようとしていたところを、「生みの親の名前をつけるべきだ」と説得し、「佐藤錦」としたのです。昭和3年のことでした。
選りすぐりの佐藤錦は「赤い宝石」と呼ばれることもあり、その価格に驚くこともありますが、農園を訪問すると、その理由がわかります。出荷までに、じつに手がかかる果物なのです。
なかでも大変なのが、受粉作業です。サクランボは異なる種類で交配しなければ実らない他家受精の植物です。そのうえ、品種間で相性がある。佐藤錦の場合、ナポレオンと交配させる必要があります。受粉から出荷まで、大切に大切に手間をかけて育てられたフルーツ。それが佐藤錦なのです。(F)














