すぐき漬(酸茎漬)
京野菜生産農家、田鶴さんの丸すぐき漬
後ろ姿。半分に割ったものです。葉は細かく刻み、実はカブのお漬け物のようにスライスして召し上がってください
いろいろある京漬け物の中でも、最近になってやっと知られるようになってきたのが、すぐき漬です。そもそも、「すぐき」という言葉になじみがない方のほうが多いでしょう。
それもそのはずで、すぐきは桃山時代から江戸時代中期まで、京都・上賀茂神社の社家(神社に仕える家柄)が門外不出の扱いで育ててきたお野菜なのです。それも、もっぱら漬け物専用とされ、できあがったすぐき漬は御所や公家向けの贈答品に用いられていたのでした。
こうした珍しいお野菜の存在が、「京野菜」の実力の一端を示しています。京都はなんといっても、794年から明治維新まで日本の首都であり、珍しい文物や植物をもった外国からの使者がやってきたところです。すぐきも、(変種でなければ)外国からもたらされた新しい品種だったのではないでしょうか。
すぐき漬を食べてみると、ダイコンやカブとの類似性を感じることでしょう。事実、すぐきはカブの一品種です。それを、塩でしっかりと漬け込み、代々受け継がれてきた乳酸菌に活躍させて、お漬け物にします。
乳酸発酵食品ですから、名前の通りすぐき漬は酸っぱいお漬け物ですが、その酸味はさわやかで、とても食べやすい。万人にお勧めできる京漬け物のひとつです。
すぐき漬は、おいしさ以外にも注目を集めるポイントがあります。ルイ・パストゥール医学研究センターにいた日本人研究者・岸田綱太郎博士(1920‐2006年)が、すぐき漬には生きたまま腸に届き、人体のインターフェロン産生能力を高める(=免疫能力を高める)機能をもつ乳酸菌が含まれていることを発見したからです。
この菌に岸田博士が命名したのが、「ラブレ菌」です。ヨーグルトのような乳製品だけでなく、お漬け物からもすぐれた乳酸菌を摂取できることが証明されたというだけでも、博士の研究には大きな意味があると思います。(F)














