ぬか床と乳酸菌
ぬか床にキュウリを漬けるところ。夏なら数時間で漬かります。
ぬか漬の3代表・ナス、ダイコン、キュウリ。自作ならほかにも長イモやニンジン、カブ、ミョウガなどいろいろ試せます。
前回、ぬか床について、「ビタミンという概念も、乳酸菌という概念もなかった時代のものとは、とても思えないほど合理的な、世界に誇れる発明」であると書きました。その発明は、使いこなしのノウハウとセットです。
「ぬか床は毎日、底からかき混ぜろ」と言われます。それが江戸時代から伝わるノウハウです。では、なぜかき混ぜるのでしょうか。私は漠然と、「かき混ぜないと腐りやすいのかな」と思っていました。
実際は、もっと高度な話でした。その秘密を解く鍵が、乳酸菌です。あまりにもぬか床が乳酸菌にとって居心地がいいので、そのままだと乳酸菌の活動が活発になり、すぐに酸っぱい漬物ができあがってしまう。
それを防ぐのが、かき混ぜるという行為なのです。乳酸菌は嫌気性の菌です。それを空気に触れさせることで、乳酸菌の活動が弱まります。つまり、ぬか床は、乳酸菌コントロールのノウハウも含めた発明だったわけです。
逆にいうと、もしも酸っぱい漬物が好きなら、そんなに頑張って毎日かき混ぜる必要はありません。たまに休ませてやると、表面に産膜酵母とよばれる酵母が白い膜をつくります。これをまた混ぜこんでやると、酵母が乳酸菌を食べてバランスをとってくれるのです。
「細菌学」という学問がまったくない時代に、これほどまで乳酸菌と酵母を上手に制御する装置を作り出したことに、驚きを禁じ得ません。ぬか床は世界に誇る日本の発明だといっていいでしょう。(F)














