ナンテン(南天)の粋


ナンテンの花のアップ。よく見るとかわいらしい。
前回、植物がもつ天然の防腐作用をうまく利用した例について書きました。ハランを使ったお弁当の仕切りや、柿の葉を使ったお寿司などです。
写真の柿の葉寿司は、上に塩サバを使っていますから、塩と酢と柿の葉の作用で安全を確保している食べ物なわけです。しかも、持ち運びがしやすく、食べやすく、おいしい。なんと素敵な智恵のカタマリでしょう。
これと似た例に、ナンテンの葉を使った飾りがあります。ナンテンはメギ科の植物で、花の少ない冬に、元気になる「赤」を見せてくれますし、「難を転ずる」ということで、縁起もいいことから、日本家屋の庭によく植えられているものです。
たとえば、お赤飯や栗ご飯などをご近所に配ったりするときに、ナンテンの葉が活躍します。形もいいので、上に乗せてやると見栄えもする。市販のお弁当の中には、これもプラスチックで模したものをつけていることがありますね。
「もしもまずかったら、この葉をしがんでもらうのよ」
祖母はナンテンの葉を折り箱に飾りながら、よくこう言っていました。しがむと食物を嘔吐させる作用があるから、まずかったときや当たったときに使ってもらうのだとか。
調べてみると、ナンテンの葉は「南天葉」(なんてんよう)といって、生薬に分類されています。効能は健胃、解熱、鎮咳など。防腐作用もありますが、ナンテンの葉の飾りには、謙遜と相手方の身の安全確保の意味合いがあったわけです。
食べ物にナンテンの葉を飾るのは、自然のチカラを熟知した相手方への気遣いであり、粋です。これをプラスチックでつくるのは、お弁当の仕切りの場合よりも、さらに意味がない。見た目もけっしてきれいではないし、なんの作用もありませんから。(F)














