木次のブラウンスイス牛乳

ブラウンスイス牛乳木次乳業のブラウンスイス牛乳。もちろんパスチャライズド

ブラウンスイス種。ホルスタインよりミルクの生産量が落ちるので日本では普及しなかったが、そのミルクは乳脂肪分を約4%含み、チーズ作りに適している

ブラウンスイス乳で作ってみた自家製リコッタチーズ。さわやかな味わい。

木次」と書いて、「きすき」と読みます。島根県の奥出雲地方の地名です(旧地名では島根県大原郡。現在は雲南市)。

前回とりあげた「パスチャライズ牛乳」ですが、その導入に日本で初めて成功したのが、木次で酪農に取り組んでいる木次乳業でした。1975年(昭和50年)からテストを開始し、3年がかりで安全性と効果を確かめ、1978年に商品化に成功したのです。

そのテスト内容が徹底的です。さまざまな条件で熱処理をしたあと、その牛乳を発酵させてデータをとります。そのうえ、自分たちで食べ続けて、味わいと安全性を確認したのだといいます。

超高温滅菌法では有用な菌まで死滅しますから、このようなテストをやっても意味がありません。低温殺菌だからこそ、発酵テストが生きるのです。人間にとって有用な菌が生き残り、有害な菌だけが死滅し、ミルクが本来もっている栄養成分が変成しない条件を探り当てるためのテストでした。

低温殺菌の場合、もともとの牛乳の質も大きく影響します。このテストの間、木次乳業は酪農家に飼料の選択、搾乳のしかた、牛舎の管理法などを指導し、細菌数の少ない、質の高い牛乳の生産にも取り組みます。質が高ければ高いほど、ミルクにとっていい条件で殺菌できるわけです。

木次乳業の自社牧場(日登牧場)では、日本では珍しいブラウンスイス種を導入し、山間地酪農で育て、それをパスチャライズ牛乳として販売しています。ブラウンスイスはスイス山岳地帯で飼われていた乳肉兼用種で、そのミルクはチーズ作りに適しているそうです。

いろんな意味でちょっと味わいの異なる木次のブラウンスイス牛乳。試してみる価値がありそうです。ひょっとすると、「牛乳は苦手」「飲むとお腹の調子が悪くなる」という人も、「これなら飲める」というかもしれません。(F)